海外旅行のトラブルと対策
みんなが楽しみにしている海外旅行。
家族旅行でも、中高年夫婦のご褒美旅でも、一人旅や新婚旅行でも、非日常のワクワクと同じくらい「治安」や「トラブル」が気になるものです。
子連れで海外はちょっと不安…。
中高年になってからの一人旅、狙われないかな?
新婚旅行でトラブルに巻き込まれたくない!
こうした不安は、事前に「起こりやすいトラブル」と「具体的な対策」を知っておくことで、かなり軽くできます。
外務省のデータでも、日本人が海外で巻き込まれる犯罪の多くは、スリや置き引きなどの窃盗・詐欺などの財産犯罪とされています。
油断しないこと、そして正しい防犯行動を知っておくことが安全な旅のカギです。
この【家族・夫婦・一人旅の海外トラブル5選】の記事では、元海外旅行添乗員が、日本人旅行者が遭いやすいトラブルとその対策、さらに万一巻き込まれてしまった時の対応までまとめてご紹介します。
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1.海外旅行トラブルその1:スリ・スマホ盗難

海外旅行で日本人がもっとも遭いやすいトラブルが、観光地や公共交通機関でのスリ被害です。
ターゲットになることが多いのは、現金とスマートフォン。パスポートやカードよりも現金・スマホを狙うケースが目立ちます。
地下鉄、混雑したバス、人気観光地の行列、マーケット、デパート…人が多い場所には、ほぼ必ずスリが潜んでいると考えておいた方が安全です。
スリの被害を防ぐ基本ルール

スリ対策の鉄則は「多額の現金を持ち歩かないこと」と「ポケットに貴重品を入れないこと」。
その日使う予定の現金だけを財布に入れ、残りはホテルのセーフティボックスに保管しましょう。パスポートも、チェックイン後は原則として金庫で保管するのがおすすめです。
財布やスマホは必ずファスナー付きのカバンに入れ、カバンは体の前で持つのが基本。
人混みでは、カバンのファスナー部分を手で押さえるくらいの意識でちょうど良いです。
リュックは背中側にあるため、中身を開けられても気づきにくく、スリからすると好都合なカバンです。
どうしてもリュックを使う場合は、混雑した場所では前に抱えるように持ちましょう。
移動日や長距離移動など、どうしても現金やパスポートを多めに持ち歩く日は、腹巻きタイプのシークレットポーチも有効です。
首から下げるタイプは紐が見えて狙われやすいので、服の下に隠せる腹巻きタイプがおすすめです。
【スリ対策まとめ】
多額の現金を持ち歩かない。
財布やスマホをポケットに入れない。
ファスナー付きのカバンを体の前で持つ。
移動日は腹巻きタイプの貴重品袋を使う。
ファミリーや中高年夫婦の旅では、「一番荷物が多い人」が狙われがちです。
子どもに気を取られている親、新婚旅行で写真に夢中のカップルなどは特に注意しましょう。
2.海外旅行トラブルその2:置き引き・荷物盗難

次に多いのが、ホテルやレストラン、カフェ、空港ロビーなどでの置き引きです。
日本の感覚で「ちょっとだけ椅子に置いておく」「席取りにカバンを置いておく」と、あっという間に持ち去られてしまいます。
とくに被害が多いのは、ホテルの朝食会場やロビー。
旅行客が多く出入りする場所は、泥棒にとっても「稼ぎやすい場所」です。
荷物から「目」と「手」を離さない
海外では「荷物から目と手を離さない」が鉄則です。
席を立つときは、必ず荷物を持って行きましょう。「数分だから大丈夫」は通用しません。
カフェやレストランでは、カバンをテーブルの上に置きっぱなしにせず、肩からかけたまま前に抱える、椅子の背もたれと体の間に挟む場合は、カバンの紐を腕に通しておくなど、常に体のどこかとつながるようにしておくと安心です。
ブランド物のバッグや高級時計などは、それ自体が「狙ってください」とアピールしているようなもの。海外旅行には目立ちすぎないバッグを選ぶのも、防犯対策のひとつです。
【置き引き対策まとめ】
荷物からは常に目と手を離さない。
席取りにカバンを使わない。
テーブルの上・足元の荷物にも紐を通すなど工夫する。
ブランドバッグは旅には持っていかない。
3.海外旅行トラブルその3:署名詐欺・ミサンガ詐欺

ヨーロッパを中心に多いのが、署名詐欺やミサンガ詐欺などの「声かけ系トラブル」です。
よくあるパターンは、耳や目が不自由だとアピールしながら「支援の署名」を求めてきて、その後しつこく寄付を要求してくるケース。
また、ミサンガやブレスレットを勝手に手首に巻きつけ、「もう結んじゃったから払え」と高額請求をしてくるケースです。
一見、女性や子供が近づいてくることもあり、「かわいそうだから…」と油断しやすいのがこの手の詐欺の怖いところです。
署名・ミサンガ・バラ売り…「近づいてくる人」は基本スルー
旅先で「知らない人から急に何かを渡そうとしてきたら、基本的には受け取らない・立ち止まらない。
これが一番の防御です。
それでも囲まれてしまったら、毅然とした態度ではっきりと「NO」「ノン」「ノーグラシアス」など、現地語や英語で断りましょう。
それでもしつこい場合は、「ポリス?(警察呼ぶよ?)」と少し強めのトーンで言うと退散することもあります。
ただし、一人旅や女性だけのグループで身の危険を感じる場合は、無理をせず小額であっても支払ってその場を離れる判断も大切です。
命と安全がいちばんです。
【署名・ミサンガ詐欺対策まとめ】
知らない人から何かを渡されそうになったら受け取らない。
署名用紙やミサンガを見せられても立ち止まらない。
「NO」とはっきり断り、それでもダメなら安全を優先。
4.海外旅行トラブルその4:クリームトラップ・汚れ系スリ

ヨーロッパや南米などで報告されているのが、クリームトラップやケチャップ・アイス・鳥のフンなどを使った「汚れ系スリ」です。
背中や服にクリームやソースをつけられ、「後ろ、汚れてますよ。拭くのを手伝います」と親切そうに近づいてきます。
慌てて対応している間に、別の仲間がカバンや財布を盗む…という手口です。
汚されても、その場で落ち着いて「スルー」
服を汚されても、その場で慌てて対応しないことが最大の防御です。
「ありがとう、自分でやるから大丈夫」と軽くあしらい、荷物をしっかり握ったまま、安全な場所(トイレの個室やホテルの部屋など)まで移動してから落ち着いて汚れを落としましょう。
特に、子連れファミリーや中高年夫婦は、荷物も多く注意が分散しやすいため、この手のトラップのターゲットになりがちです。「不自然に親切な人」には警戒心を持っておきましょう。
【クリームトラップ対策まとめ】
服を汚されても、その場で慌てて対処しない。
手伝うと言われても断り、荷物から手を離さない。
汚れはトイレの個室やホテルの部屋など安全な場所で処理。
5.海外旅行トラブルその5:ナンパ・危険な誘い

とくに女性の一人旅や新婚旅行、カップル旅行で注意したいのが、ナンパやしつこい誘いです。
「安くガイドしてあげる」「夜景のきれいなバーを知っている」「車で送ってあげる」など、一見親切そうな提案でも、目的がお金や体であるケースも少なくありません。
危ないのは男性からの誘いだけではなく、女性や複数人のグループで声をかけてくるケースもあること。自宅に招こうとしたり、知らない場所へ連れて行こうとする誘いは、基本的に断るのが安全です。
「行かない・飲まない・ついていかない」が基本
旅先での出会いは楽しいものですが、よく知らない人の車・家・閉ざされた空間には絶対について行かないことをルールにしておきましょう。
断るときは、はっきりと「NO」と伝えることが大切です。日本人は遠回しな断り方をしがちですが、曖昧な態度は「まだ押せばいける」と勘違いされることもあります。
中高年の一人旅や夫婦旅でも同じです。
「せっかくだから」と軽い気持ちでついて行った結果、大きなトラブルに発展するケースもあります。
迷ったときは「慎重さ」を優先しましょう。
【ナンパ・危険な誘い対策まとめ】
知らない人の車・家・バーなどにはついて行かない。
誘いは曖昧にせず「NO」とはっきり断る。
女性同士やグループからの誘いでも油断しない。
6.スリ・盗難にあってしまった時の対応

どんなに気をつけていても、100%防げないのがトラブル。万一、スリや盗難にあってしまった場合は、次の順番で対応しましょう。
① 現地の警察に被害届を出す
現金は戻らないことも多いですが、警察の盗難届(ポリスレポート)は保険金請求に必要になることがあります。盗まれた場所・時間・物の内容をメモして、落ち着いて届け出をします。
② 海外旅行保険会社の緊急連絡先に電話する
渡航前に加入した海外旅行保険に、携行品損害(荷物の盗難補償)やカード盗難・緊急支援が含まれているかを出発前に確認しておきましょう。加入していれば、必ず保険会社に連絡し、必要書類や手続きを確認します。
③ クレジットカード会社に連絡してカードを止める
財布ごと盗まれた場合は、カード会社の緊急連絡先にすぐ電話し、利用停止の手続きをします。渡航前に、カード裏面の緊急連絡先やカード番号をメモしておくとスムーズです。
④ パスポートを盗まれた場合は大使館・総領事館へ
パスポート盗難の場合は、現地警察で盗難届を取得したうえで、最寄りの日本大使館・総領事館に連絡し、パスポートの再発行や帰国のための渡航書発給手続きを行います。
添乗員付きツアーであれば、これらの手続きは基本的に添乗員さんがサポートしてくれます。
不安な方や初めての海外旅行、子連れ旅・中高年の一人旅などは、ツアーを選ぶのも立派な安全対策です。
【被害にあった時の対応まとめ】
現地警察に被害届・盗難届を出す。
海外旅行保険会社の緊急連絡先に電話する。
クレジットカード会社に連絡してカードを止める。
パスポート盗難時は大使館・総領事館に相談。
7.まとめ:準備しておけば、海外はもっと楽しい

スリや置き引き、詐欺、ナンパ被害にあってしまうと、その国や街自体の印象まで悪くなってしまいます。せっかくの家族旅行、新婚旅行、中高年夫婦の記念旅行、一人旅が台無しになるのは避けたいですよね。
ですが、今回ご紹介したような「よくあるトラブルの具体的な手口」と「事前の対策」を知っておくだけでも、巻き込まれる確率はぐっと下げることができます。
旅行前には、行き先と一緒に「行き先名+危険」「行き先名+詐欺」「行き先名+スリ」などで最新情報をチェックし、外務省の海外安全ホームページも必ず確認しておきましょう。
あとは、腹巻きタイプの貴重品ポーチやスキミング防止カードケースなど、防犯グッズを一つだけでも用意しておくと安心感が違います。
心配ばかりせず、でも油断もしすぎず、バランスよく海外旅行を楽しんでください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
